松尾 宗明 先生(医2期 佐賀大学医学部小児科教授)平成28年度 同窓会総会・講演会 講演抄録

update: 2016.08.17

「小児の在宅医療の現状と今後」
佐賀大学医学部小児科教授 松尾 宗明


  日本の新生児医療は世界のトップレベルで、新生児死亡率は30年前の1/5以下に下がっています。しかしながら、一方で障害を持ちながら社会で生活する子どもたちの数は増加傾向にあります。私は小児科の中でも小児神経疾患を専門とし、たくさんの障害を持つ子どもたちや家族とかかわってきました。研修医のころ受け持った重症仮死の新生児は、もう30歳を超え、まだ私の外来に来てくれています。なかには、人工呼吸器の助けがないと生きていけない子どもたちもいます。在宅で人工呼吸をしているある子どもさんに二人目が生まれて、同じ病気だとわかったときに、その子どもさんの両親は2番目の子どもさんには人工呼吸をしないという選択をされました。そんなとき私たち医療者に何ができるでしょうか?子どもたちの問題を考える場合、本人自身は言うまでもありませんが、その子を取り巻く家族の問題が大きくかかわってきます。障害を持つ子ども本人の立場とその子の兄弟を含む家族の立場とのジレンマも存在します。核家族化の中での母親への負担は増大しており、逆に祖父母と同居の場合は、若いころはいいですが時がたつと介護者である両親の親の介護の問題も出てきます。小児の在宅診療の現状についてご紹介し、今後の方向性について皆さんと考えたいと思います。