磯田 広史 先生(医24期)2019年度 講演抄録

update: 2019.07.02

厚生労働省で医系技官として学んだこと

磯田 広史 先生,医24期, 佐賀大学肝疾患センター 助教

 私は平成19年3月に佐賀大学医学部を卒業後、同附属病院卒後臨床研修センターで2年間の初期研修を終え、佐賀大学医学部肝臓糖尿病内分泌内科に入局し、これまで肝臓専門医として医療に従事してきました。医師として10年目を迎えた平成28年3月から平成30年6月まで、医局の交流人事により、厚生労働省健康局がん・疾病対策課肝炎対策推進室に医系技官(肝炎対策専門官)として配属されることとなりました。

 医系技官としての業務の大きな柱は医療費助成制度と肝炎研究に関することでした。

 医療費助成の仕事では、近年画期的なC型肝炎治療薬が次々と登場し、劇的に治療効果が高まる一方で、非常に薬価が高額であることが課題です。そのような中でも患者が安心して治療をうけることができるように、医療費助成制度を、新しい知見を収集しながら必要に応じて修正します。

 また、肝炎研究においては、肝炎ウイルス検査の受検率をどうやって向上させるか、肝炎に関する差別・偏見をどうやって予防・改善させるか、などといった行政的な課題を解決する研究や、B型肝炎ウイルスの特効薬や肝硬変の治療薬の開発等を目指した基礎・臨床的な研究に対し、30億円超の予算を組んで取り組みます。最先端で研究をされている先生方や、私たちが学生の頃から参考にしてきた教科書や医学書を執筆された様な先生方のご意見を伺いながら、今後の研究の在り方を検討しますが、この様な贅沢な授業を受けられる機会は、厚労省でしか得られないものと思います。

 その他にも、私の在任中には肝がん・重度肝硬変患者への支援制度の新規創設、熊本地震での被災地支援やB型肝炎特措法の改正における衆議院・参議院の国会集中審議への対応など、濃密な経験を得ながら2年間を過ごすことができました。

 私は肝臓専門医として、これまでは目の前の患者だけに集中して日々働いてきたように思います。厚労省では、多くの肝臓専門あるいは非専門の医師、有識者の先生方、国会議員の先生方、患者団体や一般団体の皆様、その他多くの方々のご意見を伺いながら「国」として施策を立案し実行していきます。仕組みを変えることができるというダイナミックな視点は、これまでの一個人としての視点からは大きく違い、文字通り大きく視野が開けたように感じます。  今回は、厚生労働省への人事交流の機会を与えてくれた佐賀大学医学部と同窓会の皆様に深く感謝申し上げるとともに、ここで得た体験を皆様にご報告したいと思います。