末岡 榮三朗 先生 講演抄録(平成29年度 佐賀医科大学・佐賀大学医学部同窓会  総会・講演会)

update: 2017.06.30

「古い医者が挑戦する個別化医療と医療ICTの融合 ~地域連携と人工知能の活用~」

 佐賀大学医学部臨床検査医学講座・教授 末岡 榮三郎 先生(医1期)

 

 佐賀医科大学が開校して来年40周年を迎えます。私たち一期生をはじめ創設期のメンバーは、故古川初代学長の、「地域医療へ貢献」「赤ひげ的医師像の実践」など、単なる医療従事者としての知識や技術の習得のみならず、基本的な医療者としての姿勢を教育されたと考えています。それから40年という時を経て、一卒業生としての自分はどのような活動をしてきたのか、これから目指すのかを二つの視点からお話しできればと思います。

 一つ目は臨床の面から、患者に寄り添う医療、症状や病気を見るのでなく全人的な医療が行われているかを、専門として選んだ血液内科の臨床経験と最近始めたHTLV-1専門外来を例としてお話ししたいと思います。私が臨床を始めた当時、白血病に対する治療成績は芳しくなく、立て続けに担当した患者さんが亡くなられ実力の無さを痛感しました。その後研究生活を経て臨床現場に戻り、治療法の進歩を実感しますが一方で医業分担の流れも痛感します。HTLV-1専門外来はマニアックな取り組みではありますが、私だけでは対応できない心のケアを担当してもらえる臨床心理士さんと協同で行う、新しい外来を立ち上げました。古いタイプの医者のあがきを紹介します。

 一方で、医療ICTの取り組みとして佐賀大学メディカル・イノベーション研究所を紹介します。この取り組みは佐賀発の東証一部上場ICT企業であるオプティム社と共同で始めた医療ICTプロジェクトです。現在救急部の阪本教授のグループとスマートグラスを用いたリアルタイム状況共有システムら、眼科の江内田教授のグループと人工知能による眼底の自動補助診断システムを構築しつつあります。古いタイプの医者がなぜICTに手を出すかの思いも含めてお話しできたらと思っています。